人の口には、親知らずを入れて、32本の歯が生えています。この数は、昔からほとんど変わっていません。ところが顔の形は、エラが張った四角形から、顎の細い面長に変わっています。小さくなった口の中に、同じ数の歯が生えるのです。しかも栄養がよい分、現代人の歯は大きくなったといわれています。狭い口の中で、歯が密集し、斜めに生えたり、重なったりして、乱れた歯並びになりがちです。
現代人の顎が小さくなった原因のひとつは、食べ物です。カレーライス、ハンバーグ、スパゲティーなどが好まれていますが、どれもさほど噛まずに食べられるものばかりです。口の筋肉は、内臓とよく似ています。胃は使わなければ弱るように、顎も使わなければ退化するのです。めざしやゴボウなど、よく噛んで食べるものは、顎を丈夫にするだけではありません。噛む刺激で、脳の働きがよくなり、顔の表情までも生き生きとさせてくれます。
最近の子どもは、よく噛まなくても食べられるやわらかい食事をとることが多いので、あごが十分に発達しないことも多いもの。ほっそりしたあごは、見た目はいいのですが、永久歯のおさまるスペースが不足してしまいます。乳歯が、すき間なく、きれいに並んでいるようでは、明らかなスペース不足です。永久歯が生えてくると、デコボコな歯並びになりがちです。きれいな歯並びを目指すなら、子どもの頃からよく噛む習慣を身につけていきましょう。
歯並びの良し悪しは、見た目だけの問題ではない 歯並びが悪いと、愚鈍な印象を与えたり、はっきりと発音できなくなったりします。また隅々まで歯ブラシがとどかないことがあるので、虫歯や歯周病になりやすく、口臭を引き起こしすいともいえます。さらに、噛み合わせも悪くなるので、頭痛、肩こり、耳鳴り、胃腸病の原因になることもあります。歯並びの良し悪しは、生死にかかわる問題ではありません。しかし、見た目の印象を左右し、体全体におよぼす影響は非常に大きく、健康をもおびやかしかねない問題ではあるのです。